市木木綿

写真は年代物の力織機(りきおりき)。貴重な市木木綿は向井ふとん店で取り扱っております。

熊野伝統の風合いを残したくて、市木木綿を織っています。

市木木綿(いちぎもめん)は世界遺産熊野古道、伊勢路、浜街道沿いの市木村(現、三重県御浜町下市木)で明治時代に始まりました。

使い込むほどに肌になじむ風合いが好評をよび、最盛期には45軒もの市木木綿に携わる織元や染屋などがありました。

しかし、昭和の時代に入り、大量生産の繊維の波におされ徐々に減っていきました。

今では、生産者は私、向井浩高一人だけとなっています(2015年現在)。
 

市木木綿の風合いの秘密は、やわらかい糸と年代物の力織機(りきおりき)にあります。

手で引っ張ると切れてしまうくらいの柔らかい国内最高級の単糸(たんし:撚りをかけていない糸)を100年前から使っている古い力織機で織り上げます。

柔らかい糸なので、切れやすくのり付けをしなくては織れませんが、使い込んでいくうちに、のりがぬけて独特のやわらかい風合いになります。 

私と市木木綿の出会い。

最高級の単糸を伝統の技術で織り上げます。

私はふとん職人として毎日布団や座布団を作ってきました。
布団職人としてどこにもない当店だけのオリジナル商品を作りとたいと思っていました。
いい素材を探すためにに東京や大阪の展示会やなどに何回も通いました。
ですがこれはという物になかなか出会えませんでした。
そんな中、ふと高校の同級生のお父さんが市木木綿を織っていたことを思い出しました。
それまで私は地元にいながら市木木綿を見たことがありませんでした。
どんなものか少しのぞいてみようと同級生の家の横にある工房に行って市木木綿を初めて見た時の感激を今でもおぼえています。
工房の中は少し油の臭いがしてシャトルが弾かれる「カシャン、カシャン」とすごい音がしていました。
古い織機がベルトの動力で動いていて、大正時代か明治時代にタイムスリップしたような気がしました。
そして織りあがった生地の縞柄がカラフルでどこか懐かしく生地の風合いも現代の高速で織り上げる生地にはない優しさがありました。
「絶対これで座布団や布団をつくりたい」と思いました。
実際に座布団を作ってみると生地の目が詰まりすぎてなくて通気性がよく熱や湿気がこもりにくく今までにない肌触りにしあがりました。
今まで、東京や大阪に行って色々探していたのに、こんなに身近なところにこんなに素晴らしい物があったんだと思いました。
 

伝統を後世へ受け継ぐために。

100年前の市木木綿
私が市木木綿を織るきっかけになった100年前の市木木綿です

向井ふとん店では、通気性がよく、肌によくなじむ市木木綿の独特の風合いに惚れ込んで、織元さんから市木木綿を仕入れて、布団や座布団を作っていました。
私も地元の木綿を使ってどこにもない商品を作れることに職人として喜びをかんじていました、そんなある日、織元さんが高齢のため、やめると告げられました。
 もう一軒、織元がありましたがもっと高齢でこのままでは市木木綿が無くなってしまうと思いとても残念に思いました。
ふと、自分で市木木綿を織ったらと思いましたが布団屋の仕事をしながら自分には無理だと思いました。

数日後、市木のお客様にお布団の打ち直しの注文を受けました。
お客様のお宅にお伺いしたところ古い市木木綿を側生地に使った掛布団でした。
綿を打ち直して側生地も新しくすることになりました。
古い側生地は、処分することが多いのですが、お客様は「この市木木綿の生地は私の祖母が嫁入りに持ってきた物だから、大事に取っておきます」と言いました。
そのお客様は、70歳代でしたのでその方の祖母ということは、100年以上前の市木木綿です。
現代は、大量生産使い捨ての時代ですが、100年前の物が思い出と一緒に大事にされている。
市木木綿はすごい、自分も思い出と一緒に長く使ってもらえる市木木綿を残していきたいと思いました。

そして平成16年に織元さんにお願いして、工房をお借りして、織りの技術を教えていただきました。

今こうして、市木木綿を織れるのも、代々市木木綿の伝統を守ってきた市木の方々のおかげです。
いにしえの人々の感謝して、その方達に恥じないようにと思いながら織っています。 

 





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市木木綿 熊野古道 手作り 向井ふとん店

ロゴに込めた思い

市木木綿のロゴは木綿が織られていく様子を表したものです。
市木木綿の持つ柔らかさをロゴの曲線で表現しています。
そして市木を流れる市木川をイメージしています。

屋号も市木木綿のしなやかな柔らかさを表現しています。
「綿」の字の右側は綿織りに使用する木管をイメージしています。